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園芸療法の効果.

『身体機能』




園芸作業の長所は、それぞれの対象者にふさわしい、
またリハビリテーションの目的にあったプログラムを提供できることにあります。

リハビリテーションのため仕方なくやらされている、というストレスを感じることがなく、
自主的に知らず知らずに体が動いている様子が見られます。

・全身を使った運動(スコップを使って畑を耕すなど)、
・指先の巧緻性を回復するための作業(播種やクラフトなど)、
・歩行を促す水遣り作業、
・腕の筋力を使う鉢植え
など、多様なプログラムがあります。

筋力が弱った方でも、園芸に参加できます。

理解力、身体機能にふさわしい作業手順と道具を提供します。


冷蔵庫用のアイススクープは軽量で
土を掬うのに便利です。
 

レンゲを使って、紙コップに土を入れて種をまきました。

洗面器の中の土の高さとコップの高さを同じにすれば、腕があがらない方でも土入れ作業ができます。
 



以下は、高齢者施設で園芸療法を指導しているリーダーからの報告です。



実例@


●作業に集中するうちに腕が上がるようになる



小仲さん(目黒区の有料老人ホーム)は、活動開始当初から参加されていますが、
最初の頃は会話が乏しくもなく手もあまり動かせないので、
サポート役のスタッフが代わりにほとんどの作業をしてしまうという感じでした。

しかし、毎回お声かけしながら様子を見ていると、ご自分でやりたいというお気持ちはあるようでしたので、
花を切るときには切りやすい位置に花を持っていく、土を入れるときは入れる高さまで鉢を斜めに傾ける等の
工夫をして、なるべく少しでもご自分で出来るように心がけました。

そのうち、徐々に笑顔が見られ、こちらの言葉を繰り返しておっしゃるなど会話も増えました。
なかなか上がらなかった腕も鉢に土を入れようとある程度の高さまで上がるようになりました。

小さなジョーロを置くと、
持ち上げて水やりをしてくれました。
 



ご家族の方がいらしていたときに一緒に活動に参加され、
「こんなに腕が上がるなんて」「こんなに言葉を発するなんて」と驚いていらっしゃいました。

感激屋の小仲さんはアレンジメント等きれいな作品が完成すると涙を流されることもあります。
これからもできる限りご自分で出来そうなことを見つけて上手に介助し、
満足感や感動を味わっていただければと思っています。

(報告者:佐々倉リーダー)

実例A


●難しいと思われていた作業にも取り組む


岩崎さん(世田谷区の有料老人ホーム)はリウマチですが、
園芸の時間をとても楽しみにしていらっしゃる方だとスタッフから聞いていました。

右手の力が極端に弱いので、シャベルで土を移動するときや、
ハサミを使う作業はできないものと手を貸していました。

高齢者施設に入所すると
危険防止のためハサミを使う機会が失われます。

園芸の場で、スタッフの見守りの中、
上手にハサミで切れました。
 



ある日のフラワーアレンジメントのとき、同じ班の他の認知症のある方にゆっくりと説明していると、
岩崎さんは待ちきれずに自分からハサミを持って枝を切り始めました。

その様子を見ていると、少しだけ切ると「疲れたわ」と言って休まれますが、
それでも休み休みの作業でほぼ一人で完成されました。

押し花を使ったフレーム作りのときにも、一人で作業を始められました。
いままでは考えられないことでした。ご自分だけでできることがだんだん増え、
今ではほとんどの作業をこなされます。
楽しく作業されているのを見るととても嬉しいです。


(報告者:山下リーダー)

実例B


●意欲が出て、つかまり立ちするようになる


奥平さん(長野県デイサービス)は、足と左手が少し不自由です。
物静かな方だと聞いていましたが、本当に静かな方でほとんど会話がなく、
返事をされるときもとても小さな声でよく聞き取れません。
何回も聞き返したら失礼かと思い「どうしよう〜」と迷っているうちに終わったことを記憶しています。

3回目の活動で、グループでの作業をやったときの話し合いにも、
自分から一言も話をする事ができませんでした。

手も出せないので、他の方に奥平さんの分までやらせないようにして、
少しだけでもやっていただくようにするのが精一杯でした。

後のお茶の時間も会話が進みませんでしたが帰るときに声をかけると、ニコッとされたのが心の救いでした。

思わず立ち上がっての作業。  



ところが、回数を重ねていくうちに、ご自分から苗や道具等にも手が伸び、
ご自分から作業されるようになりました。
グループで作業されるときも、ご自分の考えを言われるようになりました。

足が悪いので椅子に座って作業される方なのに、
つかまり立ちされて作業され職員の方もびっくりしたことがありました。

お茶のときも自ら話されることは少ないものの、他の方とも会話するようになりました。


(報告者:久保田リーダー)

実例C


●身体を動かすことで、顔色も良くなる


小平さん(渋谷区の有料老人ホーム)は、
園芸に参加されてもご自分でできることはほとんどない上に反応も少ない方でした。

その後、内臓を悪くして入院され、退院後施設に戻り最近になって再び園芸の場に顔を見せるようになりました。
ただし退院後は更に心身の状態が衰えているようで見学扱いの状態になっていました。

プラスチック製の軽量レンゲを
持つことができました。

力が入らないので、
土の表面をなぞる程度ですが、楽しそうでした。
 



しかし、他の方が作業を行うのを羨ましそうにしている様子が見られたので、
一緒に手を添えて土混ぜや土入れをしたところ、ご自分でもやろうというお気持ちになったようで、
手に力が入っているのが感じられました。

そのようのことが続くうちに、ずいぶんと表情も豊かになり、顔色も良くなったように思います。
「うん」「そう」などの発語も増え、見学に来られたご家族の方も驚いていました。


(報告者:小澤リーダー)

日本園芸療法普及協会

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